■金属について

金、銀、銅、鉄。
金属はどれも硬いイメージがあると思いますが、種類によっていろいろな特徴があります。
釣りの重りに使う鉛などは手で簡単に曲げることができますし、純金も歯形をつけることができます(時代劇で小判を噛んで本物かどうか調べるシーンがあったりします)。
また、「鉄は熱いうちに打て」と言われるように、真っ赤に温めた鉄は簡単に変形させることができます。

木や紙で立体を作る場合、折ったり、切ってはったり、削ったりすれば作ることができますが、素材そのものの変化はほとんどなく、一度付いた折り目は消せません。
ところが、金属は粘土のように形を変え、自由に立体物を作ることができるのです(塑性変形)。

私が主に使っている素材は銅と真鍮です。銅は10円玉、真鍮は5円玉と言うと想像しやすいかと思います。
はやや赤色の金属で柔らかく、良く延びる扱いやすい金属です。そのかわり粘り気が強く、ヤスリをかけたり糸鋸で切ったりする時に強い手ごたえがあります。
また熱伝導率が高く、銅製の鍋やフライパンはまんべんなく熱が回るためプロの料理人も愛用していたりします。
かつては銅につくサビ(緑青)が有害と言われ、銅食器のほとんどは内側に錫(スズ)メッキされていました。しかし最近は銅には抗菌作用があると言われており、銅製の三角コーナーなどを見かけることも多くなりました。

真鍮は銅と亜鉛の合金で黄色っぽい色をしており、成分の6割から7割は銅でできています。銅にくらべると少し硬いのですが、やすりがけをする時にはサラサラと簡単に削ることができます。
私は単純に色味の違いで使い分けています。

はやや黒っぽい銀色で、軟鉄と呼ばれる炭素成分の少ない鉄はよく延び、赤く熱した状態のときは柔らかくて加工もしやすく、冷えれば硬くて丈夫な金属です。価格も安いので、身の回りに一番多く使われている金属だと思います。
しかし、錆びやすいという欠点があります。塗装やメッキされていない状態の鉄はアッという間に真っ茶色に錆が吹きます。私は手に汗をかきやすいので、夏場は毎日道具の錆取りをしなくてはならないほどです。
鉄の錆は内部までどんどん進行して全体がボロボロにくずれてしまうこともあります。
鉄の中の炭素成分が多くなると硬くなりますが、その分もろくなり加工も大変になります。刃物に使われている(ハガネ)はこの炭素分の多い鉄のことで、鋼だけで薄い刃物を作ると欠けたり折れたりしてしまうので、刃先だけに使われていることが多いです。

<つづく>

■金工の技法について

金属を加工する技法は大きく「鍛金(たんきん)」「彫金(ちょうきん)」「鋳金(ちゅうきん)」の3つに分けることができます。

「鍛金」とは、金属の板をたたいて形を作っていく技法で、「追起(ついき)」とも呼ばれます。表面に鎚目(つちめ)という、金鎚で打った跡が残っているのが特徴です。
身近な例でいうと、行平鍋などがそうです(通常売られている物は機械で作られた物ですが)。

「彫金」とは、ジュエリーなどを作る時に使う技法の総称で、彫る以外にも「打ち出し」「すかし」などの技法もこの中に入ります。

「鋳金」とは、型の中に溶かした金属を流し込んで形を作る技法です。鉄瓶や、街中で見かけられるブロンズ彫刻などがこの技法で作られています。

どの技法も密接につながりがっていて、一つの技法だけでものを作ることはあまりありません。
私が主に使っているのは鍛金の技法で、細かいところを細工する時には打ち出しの技法を使っています。

<つづく>




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